おはようございます。熊本市北区の訪問看護ステーション優愛です。
今日から8月です。元気にこの夏を乗り切りましょう。
今回は不整脈「右脚ブロック」についてです。
心臓の中には"発電所"(洞結節)と、"変電所"(房室結節)、さらに電気を流す"電線"の役目をする組織があります。心臓は左右の部屋に分かれているので、当然この電線も右と左に分岐しています。脚というのはその分岐した電線の役目をする組織を、右脚とは心臓の右側を走る電線を指し、右脚ブロックとは電線上で電気の流れが悪くなった状態を意味します。
脚ブロックには完全ブロックと不完全ブロックがあります。これは心電図による分類で、完全ブロックが必ずしも完全断線を指すわけではありませんが、完全ブロックの方が電気の流れがより悪くなっている状態と理解した方がよいでしょう。
では、完全右脚ブロックでは心臓の右側に電気が流れないのでしょうか? 実はそうではありません。仮に右側が断線していたとしても、ちゃんと左側の電線から電気が流れてきますので、完全右脚ブロックの場合も心臓は正常に動きます。
それでは右脚ブロックは心臓に病気があるから起こるのでしょうか? これもたいていの場合、心配ありません。確かに先天性の心臓病や心筋梗塞、心筋症という病気があると右脚ブロックになりやすいのですが、右脚ブロックを持つ人で心臓病のある人は、その一部にしかすぎず、多くは心臓病がありません。実は右脚というのは、ちょっとしたことで電気の流れが悪くなりやすく、断線したとしてもほとんど問題はないのです。
とはいうものの、右側の電気の流れが悪いとしたら、残っている左側の"電線"(左脚)にも障害が起こるのではないか、またその場合に電気が流れなくなって心臓が止まってしまう(完全房室ブロック)のではないか、という疑問が残ります。これももともと心臓病のない人ではほとんど心配する必要はありません。
病気のために右脚ブロックが生じている人以外は、左脚にまで障害が及ぶことはあまりないのです。また仮にそうなったとしてもペースメーカーという治療法があります。
右脚ブロックは通常は症状を伴いません。しかしながら運動などで脈拍が上昇した時などに一時的(一過性)に右脚ブロックになる人がいて、この際に胸部の違和感を訴える人もいます。
右脚ブロックは心電図で診断できますが、これがまったく心配のないものかどうかは、心臓のエコー検査(心臓超音波検査)や運動負荷検査、またはホルター心電図検査で診断します。右脚ブロックの人が何か運動を始めたいときは、念のためこれらの検査を受けておいた方がよいでしょう。これらの検査で心臓病が認められず、かつ危険な不整脈も伴っていなければ、運動は可能です。
ただし、これらの検査が正常で、自覚症状がない場合でも、親や兄弟などの近親者の中に若年~中年で突然死された方がいる場合は、マラソンなどの激しい運動はしない方がよいでしょう。特に親類の中で睡眠中に"ぽっくり"亡くなられた方がいる場合には、ブルガダ症候群という特殊な病気の可能性がありますので、不整脈の専門医を受診することを勧めます。
もし検査で何らかの異常が見つかるようであれば、その病態に合わせてどの程度の運動が可能であるかを担当医に尋ねてください。また現時点では右脚ブロック以外に異常がなくても、数年~数十年先に異常が出てくる場合も時にはありますので、1~2年に1回程度は心電図検査、または健康診断を受けるようにしましょう。
いかがでしょうか。
では本日もご安全に。行ってらっしゃい。
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